染織のあれこれ

新しい上田紬の魅力、その名は「りんご染め」

新しい上田紬らしさ

工房にお越しくださったお客様に「上田紬の特徴は丈夫な事と縞・講師柄です」とご説明すると、多くの方はあまりピンとこない表情をされます。

正直なところ説明している僕もいまいちピンときていないのですからお客様がそう感じるのは至極当然だと思います。

なぜなら「丈夫な事」と「縞・格子柄」は上田紬だけの特徴ではないからです。

例えば丈夫な事は、和歌山県九度山町で生まれた真田紐や北九州市の伝統工芸・小倉織などでもそのような特徴ですし、縞・格子柄に至ってはどの産地、というよりも全世界で作られています。

お客様に上田紬の特徴をご説明する度に何かもっと上田紬にしか表現できない上田紬らしい特徴を創り出せないか?と考えるようになっていきました。

*上田紬の証紙には上田城を築城した真田家の家紋である六文銭が用いられています。

草木染めとは?

話は変わりますが僕には上田紬の特徴と同じように悶々としている事柄がありました。

それは草木染めについてです。

草木染めとは野草や木々などで染める、いわゆる植物染料の事というのは皆さんご存じかと思います。

着物業界では草木染めには統一した基準というものが設けられていないので、産地や織元によって基準がバラバラなのです。

良心的な産地や織元では使用した染料をしっかりと明記しています。 (例えば桜20%、梅30%とか)

ですが、どの産地で作られたのか分からないようなものになると、草木染めが1%でも入っていれば堂々と草木染めと謳って付加価値を付けて高く販売していたりもします。

草木染めというブランドイメージを売りにして着物ファンを騙すような一部業界人のやり方を腹立たしく思い、そういうところと上田紬は一線を画したい思いが常にありました。

*染織している様子。 ムラにならないよう何度も糸を返して染めていきます。

上田紬らしさ×草木染め=りんご染め

うちの工房では創業当時は草木染めも力を入れてやっていましたが、近年は化学染料が中心となっていました。

僕が仕事を始めて2、3年経ってから草木染めに力を入れてやってみようと思い、当初は工房の裏山で採取した梅、千曲市の果樹農家さんから頂いた杏子、そして上田市の林檎農家さんから頂いた林檎など、色々な草木を用いて染めていました。

草木染めをやっていくうちに同じ植物でも染める樹皮の分量や採取した季節や場所でも染まる色が変化することを知り、1つの植物だけで色の違いが出せることが分かりました。

それで信州上田の特産である林檎に特化して染めて、色の違いを染め分けて作ったら上田紬にしか出来ない上田紬らしい特徴になるのではないかと思い、林檎に絞った草木染めをするようになりました。

名前も草木染めと区別する為にりんご染めと命名しました。

*りんご染めは林檎の樹皮を削って乾燥させたものを煮出して染料を抽出します。

りんご染めの可能性

林檎に特化した染め、りんご染めをするようになって数年経ったある秋の事、洋菓子屋さんに行くと美味しそうなアップルパイがショーケースに並んでいました。

その時に「アップルパイは紅玉という林檎の品種を使っているんだよな~。 うん?品種?? もしかして林檎の品種でも色の違いが表現できるかもしれない!」と閃いて、品種を分けてりんご染めをするようになりました。

それまでは品種には特にこだわらずに一番生産量が多かったふじの品種だけで染めていましたが、それ以来、長野県のオリジナル林檎ブランドのシナノゴールド、シナノスイート、秋映で染めるようになり、それぞれの色の染まり方が違ってさらに色の幅が出るようになりました。

まだ他にも染めてみたい品種もありますし、りんご染めの可能性はまだまだあると思っています。

新しい上田紬の特徴としてこれからもりんご染めを磨き上げていきたいと思っています!

りんご染めの商品は着物や帯、そして小物も作っています。 小物は工房のオンラインショップで販売していますのでよろしければご覧ください。 

工房オンラインショップ -りんご染め- http://koiwai-tsumugi.shop-pro.jp/?mode=grp&gid=2060595

*写真左から秋映、シナノスイート、シナノゴールドの品種で染めた着物。